書評:「特撮と怪獣-我が造形美術」成田亨 著(怪獣デザインに芸術を持ち込んだ名もなき天才の半生)

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今回はウルトラマンと初期の怪獣たちをデザインした彫刻家成田亨さんの著書「特撮と怪獣-我が造形美術」のレビュー。

 

約20年前に購入したこの本、現在では廃刊され入手困難な様子である。

内容は大きく二つに分かれており、前半は生い立ちから芸術を志した青年時代、そしてアルバイトでゴジラの現場に入り特撮美術の世界に身を置くまで。

後半はウルトラ怪獣や手がけた映画作品の造形美術の解説や彫刻家としてのこだわりなどである。

 

何と言っても特筆すべきは円谷プロダクションに対しての恨み節がそのままダイレクトに語られている部分だろう。

芸術家の生み出した作品は芸術作品である。それを基に莫大な利 益を得ているのに何故自分は報われないんだ?要約すればこれに尽きる。

 

そもそも一枚の企画書から肉付けして行って出来上がったのがあのウルトラマンと言う作品である。

氏としてはそこに心血を注いで芸術家としての大切な時期を犠牲にしたと言う思いもあるのだろう。

それに対して自分に残ったものは何か?と言う空虚感が拭えなかったのだと思う。

 

しかし誕生から50年が経った今でもウルトラ怪獣と言えば氏が生み出したものを思い出すし、ウルトラマンの続編は限りなく世に出ているが卵型の顔に正中線を割ったとさかのデザインを超えるものは未だ存在しない。

純粋芸術家としての道は閉ざされたかも知れないが、商業デザインを超えた芸 術性を持った商業デザイナーとして後世に語り継がれているのではないか?

 

近年氏の作品も再評価され、徐々に世間に注目されつつあるようだ。

この本は先に書いた通り現在では入手困難だが、怪獣デザインや手がけた特撮美術に関する考えや発想も網羅されているので、氏の功績を偲びながら読んでみたい一冊だ。

 

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