書評「一塊の土」芥川龍之介

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 芥川龍之介の「一塊の土」のレビュー。これも初めて読みました。 

あらすじ

一家の大黒柱を失くした農家の姑と嫁の葛藤を描いた物語。
働き盛りの息子 仁太郎(にたろう)を亡くしたお住は仁太郎の嫁 お民に再婚するよう迫る。
子連れとは言えまだまだ若いお民が年老いた自分を捨てるのではないか?と言う自己保身のためだ。
そのためお住はお民にいとこの与吉との再婚を勧めるが、他人を家に入れるわけにはいかないとそれを誇示する。
 
お民は男顔負けで農作業を行い、お住はせめて手助けとばかりに孫の世話や家事全般を執り行うことにした。
働き者の嫁と言うことで近所の評判にもなりお住も得意な気持ちになるのだった。
 
その後お民は益々その手腕を発揮するようになり、家のことはお住に任せきりで自分は新たな開墾や養蚕などの事業に進出する野望を持ち始める。
お住はそれでは自分の身が持たないと暗にお民に再婚を勧めるが、お住が楽な隠居生活を望んでいることを逆に見透かされ完全に主導権を握られてしまう。
今までは嫁を尊敬の念で接していたがそれを境にお住が嫁を褒め称えることは無くなり、またお民もことある毎にお住の家事の失態をなじるようになって来る。
 
二人の確執とは正反対に世間ではお民の評判は益々上がり、ある日孫の広次が教師から母親のことを修身の授業で偉い人だと褒められたが本当にそうか?とお住に尋ねると、今まで溜まっていた鬱憤が爆発してしまい孫の前で母親を罵倒するのだった。
 
そんなある日お民は流行病であっさりこの世を去ってしまう。
お民の働きによって蓄えられた貯金や田畑でお住が心配していた老後は安泰となったが、今まで自分がお民に対して感じていたコンプレックスや不平不満を思うと自分の浅はかさを思い知らされることとなり、これからの生活への心の安らぎもどこかに消し飛んでしまうのだった。
 

レビュー

今も昔もどこの家庭にでもよくある嫁姑問題を題材に、その不安・安堵・憎しみ・嫉妬などの心理状態をこれでもかと事細かく再現した作品だと思う。
お住の自己保身っ振りと家業を手広く広げて行く過程でのお民の態度の変化がすさまじい。
当初は自分を殺して相手を思い遣る気持ちを持っていたとしても些細なきっかけで相手を憎悪する気持ちに変化する。

まるでくすぶっている炭の残り火のような心理状態の描写が素晴らしい。

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