書評「トロッコ」芥川龍之介:何の変哲もないシチュエーションで少年の心の機微を描いた名作

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芥川龍之介の短編小説「トロッコ」のレビュー
 

あらすじ

小田原~熱海間の鉄道敷設工事に使われているトロッコを見て自分もそれを押して乗ってみたいと8歳の良平は憧れている。
ある日思い切って土工に自分もトロッコを押すことを手伝わせて欲しいと頼み込みトロッコに乗せて貰う。
人の良い土工達と馴染んだのは良いのだが、家のある村から遠く離れ帰らねばならない時間帯になり気を揉んでいると、突然二人から家に帰るように言われ愕然とする。
良平は不安と闘いながら元来た線路を辿って夜の中家路を急ぐのだった。
20数年経って出版社に勤める良平は仕事で忙殺されるとあの日の暗闇の中に続く一本の線路が脳裏に甦るのだった。
 

レビュー

大人社会へ憧れる少年の心理描写が見事に表現されている。
大人(土工)に「おまえ、なかなか力があるな」と誉められるが内心とは裏腹に喜びをかみ殺した表現をするなど、誰にでも経験があるのではないだろうか。
嬉しいくせに「別に・・・」とぶっきらぼうに答えざるを得ない感じだ。
 
帰宅せねばならない時間になってそれを言い出せない一種遠慮を含んだ察してくれよと言う子供らしい都合の良い考え。
送ってくれるのでは?と微かな期待をものの見事に打ち砕かれる絶望感の表現など。
 
大した事件ではないが非日常的事件に立ち向かわねばならなくなった少年の心情をトロッコに乗って見たいと言う何でもないシチュエーションの中でよく表現されていると思う。

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