試合前の追い込み時期にとんでもない試練が訪れた!~太郎のボクシング奮闘記10

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9月末に行われるスパーリング大会に向けて着実にスパーリングの場数だけは重ねていった。

最初に「これでいける!」と言われたのはあくまでリング上で動き回れるだけの体力があると言う意味で、相手と互角に渡り合えると言う意味ではないと言うことを一連のスパーリング練習で嫌と言うほど思い知らされたのだ。

 

まずまともなステップが踏めない。

急いでパンチを繰り出そうとすると上体と下半身がバラバラな動きとなり、普通の歩行となりパンチは手打ちとなってしまう。

脚の繰り出しによる推進力を拳になかなか乗せることができないのだ。

 

また同時に右ストレートがどうしても打てなかった。

打てないと言うよりも打ち方が分からないのだ。

最初体験入会で教わったのは「右腰を水平回転させて右拳を出せ」とのことだったが、やってみれば分かるが腰を水平に右回転させるなど至難の技だと思った。

ましてや動きながらである、余計に難しい。

 

TVなどでボクシング未経験の芸人の人が半身で構えた後ろ手の方を半身のままのぎこちない状態でパンチを出している絵を見たことはないだろうか?(分かりにくい表現で恐縮だが笑)

要は腰の回転を使えないから後ろ手が前に出て来ないのだ。

これが使えるとジャブで相手との距離感を掴んでおればビックリするくらいパンチは前方に伸びる。

打撃を用いる格闘技においてリーチが長いことは大きなアドバンテージだが、腰の回転を使ってパンチを繰り出せばたとえ腕が短くても結構遠距離の相手にもヒットするものだ。

腕の短い僕が言うのだから間違いない。

 

余談が長くなったが、こうして正しいパンチも打てず根性だけで一進一退の状態のままスパー大会は近づいて来るのだった。

そして忘れもしない試合2週間前のことだった。

僕はとあるかなり上級者のボクサーとスパーリングをすることとなっていた。

 

彼は全日本社会人選手権にも出場経験があり、市民大会では15戦以上勝利している熟練ボクサーだった。

シャドウを見ていても隙がない様子。

そんな彼とその日の晩は拳を交えることになったのだった。

 

ボロボロになったジム備え付けの実戦用グラブをはめ、いざスパーリングが開始されると立て続けに左フックを2発ガンッガンッ!!と貰ったことは今でも覚えている。

かなり突き刺すようなソリッドなパンチだった。

とても痛い・・・

 

3分間のラウンドが終了するアラームがピピッと鳴り響いたのでコーナーに戻った。

鼻から下が生暖かい。

多分鼻血が出ているのだろうが、気にしている余裕はなかった。

 

30秒のインターバルを経て後半がスタートした。

僕の顎をフックがかすめた直後、薄汚れた白いキャンバスに大量の赤黒い液体がボタボタっと落ち始めた。

 

「エッ!?」と思った瞬間、Oトレーナーがスパーを中断。

どうやら僕の顎が相手のパンチで切れたようだった。

グローブはボロボロでナックル部分もささくれ立ってたからそれで切ったのだろうか?・・・

 

 

備え付けのトイレットロール(!)で顎を拭うとOトレーナーが一言。

 

「あ~!顎の骨見えてるわ、こりゃアカンわ!!」

 

いきなりの終了。そして血を拭いてトイレットペーパーで流れ出る血を止めると言う原始的な応急処置を経てジムの会長「道渡ったところに外科があるのでそこに行って来てください」と僕に伝える。

お大事にの一言くらいはあったのだろうか?僕は言われた外科医院を探して行ってみると

 

 

本日の診察は終了しました・・・(なんやと?←心の声)

 

読んだ瞬間「チーン」と言う仏壇の鐘の音が本当に聞こえたような気がした。

医院のシャッターに記載された夜間緊急診察窓口に電話し、治療してくれる最寄りの医院を探して貰い、岸和田市で一件紹介されたので夜分遅くだったがその病院にクルマで向かった。

して、そこで顎を10針縫って治療は終了。抜糸までは1週間はかかるでしょうとのことでそれは丁度試合の1週間前であった。

病院を出ると日付はすっかり変わっていた。

 

ラストスパートを掛けたい大切な時期にスパーリングで調整も出来ない最悪の状態で僕は当日を迎えねばならなくなったのだった。

 

 

後日談だがOトレーナーとこの日のスパーリングの模様を話した時のこと。

僕はささくれ立ったグラブのせいで顎を切ったと言うと即座に違うと言った。

カマイタチのような感じでスパッと切れたそうで、あんなのは長いボクサー人生で初めて見た。とのことであった。

 

 

(つづく)

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