本命の姫路市民大会前日に超話し好きの会長さんに捉まった件~太郎のボクシング奮闘記14

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こうして僕の初戦は終わった。

全力も尽くしたし非常に惜しい結果だったので正直勝ちたかったけどこればかりは仕方ない。

気を取り直して一週間後に迫った本命の姫路大会に向けて準備をすることにした。

 

ウェイトは少し増加したが1週間の猶予で充分リミットまで落とせる範囲で心配はなかったのだが、問題は疲労感だった。

たった2~3ラウンドだが余程集中したのだろう。思いの外体力の消耗が激しく、二週続けての試合と言うのははっきり言ってしんどいものだった。

そう言えばあるジムメイトが自分も2週連続で出場したけど止めておけば良かったと言っていたのを改めて思い出したりした。

でも決めたことだ。何としても出場して今度こそ勝利を収めようと思った。

 

家に帰って奥さんに試合の結果と状況を報告すると、次は絶対に勝てとの指令が出た。

そして何と今度は自分も観に行くと言い出した。

そして1週間後の10月9日、奥さんを乗せて僕は愛車プリメーラカミノワゴンを駆って一路姫路を目指したのだった。

 

今回は奥さんの提案で姫路市内で前泊することとなった。

何事もベストコンディションで臨めと言う奥さんの考えからだ。

殆ど指示、いや有無を言わせぬ命令だったと言っても良い。

そして僕らはデジタル体重計を携えてホテルにチェックインした。

 

現地に到着したのは夕方の5時過ぎだったと思う。

僕らはまず会場がどんなところか見に行こうと考えた。

姫路市内は殆ど訪れたことがないので翌朝うろたえないためだ。

大事の前にベストコンディションを整えろと言う奥さんの指令がここでも発揮されたのだった。

 

初秋とは言え夕方5時を過ぎると会場周囲は薄暗くなっている。

僕らは会場となる手柄山公園内にある姫路球場にいた。

この球場はプロ野球オープン戦も開催される由緒ある立派な市民球場だがかなり老朽化しており、薄暗い夕暮れをバックにまるで巨大な監獄の門のようにそびえ立っていた。

こんなところにボクシング会場はあるんだろうか?とウロウロ彷徨っていると、一塁側の一角にガラス窓に大きく赤いガムテープで「姫路市ボクシング協会」と書かれた場所を発見した。

球場の一角がボクシングジムとなっているみたいだ。

どんなところか中を覗くと、古めかしく然程広くないスペースにサンドバッグが吊るされており、壁を背に4メートル四方くらいの立派なリングがしつらえている。

しげしげ覗いていると「どちらさん?」と背後から声を掛けられたので振り向くと、60歳くらいのおじさんが僕らの背後に立っていた。

 

「あ、すみません。明日試合に出る者なんですけどどんな所か下見に来ました」と言うと、おじさんあぁよく来たね~と僕らを招き入れ色々説明してくれるのだった。

どうやら明日の主催者である姫路市ボクシング協会の会長さんらしかった。

この人の好さそうな明るく良く喋るおじさんは僕がどこのジムか?ボクシングキャリアは?年齢は?と立て続けに聞き、いや~お宅の会長さんは非常に真面目で腰が低い!良い人だねとか延々延々延々・・・・

喋り続け「あの、場所も確認できたしそろそろ帰ります」とも言えず2時間くらい時間が経過した。

 

「ところで君、階級は何?ああ、ライト級か。よしよし計量はもうええわ。何、ワシがこうして見たからもう万事大丈夫や、ホラちゃんとこうして対戦表に書いとくがな。え~君の名前は?」

と会長震えるおぼつかない手で僕の名前をまるでホカホカのお好み焼きの上で踊る鰹節か、熱湯を掛けられてのた打ち回るミミズのような文字で書き入れたのだ。

余程ボクシングキャリアが長かったみたいだ。

僕はね商売をやってるんだけど今は母ちゃんが全て仕切ってくれてるんでこうしてボクシングをしてるんだガハハー。

気楽なおっちゃんである。

 

「そう言えば君、ウチの○○君の対戦相手やな。こいつ気が優しくてなぁ。キャリアも浅いしマスボクシングしても相手から打たれるとすぐ下向きよるねん。ちょっとアカン垂れやからワシ心配でなぁ・・・」

 

ウソ!?ずぶの素人やん!!やっと僕にもチャンスが巡って来たやん!明日は行けるんちゃうか?!!!

 

と内心僕の心は明るくなり、減量で疲れた身体が一瞬軽くなったような気がした。

そしてまだまだ話し足りなさそうな会長を振り切り僕らはホテルへの帰途についたのだった。

 

やった!明日は貰った。これは勝てるぞ~ケケケ

僕は取らぬ狸の皮算用で何度も勝利のシーンを夢想してベッドに潜り込んでから朝まで殆ど眠れないのであった。

 

(つづく)

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