4月27日東京の大田区総合体育館でWBAスーパー王者 内山高志選手の防衛戦が行われた。
今回の防衛が成功するとV12となり、具志堅用高さんが持つ13回の防衛記録更新も時間の問題と言われる一戦。
今回の相手は同級1位の暫定王者パナマのジェスレル・コラレス選手。
コラレス選手は計量の際400gオーバーで最計量でようやく規定リミットをクリア。
サウナでの無茶な減量が祟りおそらく早い段階で内山選手に撃破されるだろうと言うのが大方の予想だったろう。
しかし大方の予想に反して、内山選手は1Rコラレスの猛攻を受けて防戦一方、2Rは見えない位置からの大振りのフックを喰らってダウン。
その後2度ダウンを喰らって2分59秒でまさかのKO負けとなり王者を陥落した。
彼の敗戦にショックを受けたボクシングファンは非常に多いと思う。僕もその一人だ。
次戦で念願のラスベガスの大舞台で統一戦か?と言う矢先の出来事だった。
内山選手ほどの名ボクサーでもあっさりと負けることがある。ボクシングは本当に分からない。
内山選手はこのまま引退するのか?
36歳と言う年齢を考えれば、今後の人生を考えれば引退した方が良いのかも知れない。
プロボクサーには定年があり、37歳になればライセンスが失効する。世界王者経験者では40歳で定年。
実力やフィジカル面では内山選手はまだまだ現役を続行できるだろう。もう一度世界王者に返り咲くことも充分可能かも知れない。
しかしボクシングはダメージが蓄積する競技だ。年齢を考えると引退時かも知れない。ボクサーとしての内山高志は終わってもこの先何十年も一個人としての内山高志の人生は続くのだ。
内山選手はボクシング技術だけでなく、人間的にも優れた方だと思う。
その一端が彼の著書「心は折れない」からの一文で伺える。
“ボクサーと言えどもただ人を殴って倒せば良いというものではない。職業としてのボクサーの前に一個人として人間性を磨かないといけない。”
こんなことを言ってたのが非常に印象に残っており、敗戦後の内山選手の対応などを見ていても彼のそういった姿勢にはブレがないように思える。
内山選手は高校生でボクシングを始めた遅咲きだ。国体で準優勝しボクシングの名門拓殖大学に入学後、まさかの補欠扱いという屈辱も経験している。
そこで彼はみんなの気が緩む夏休みも欠かさず練習し、秋の大会で絶対勝てないと思われていた先輩を試合で破ることになる。この経験が後の強さの原点になっているようだ。
この試合のインタビューでも彼はこう言っていた「自分は天才型ではないので努力は欠かせない。相手が誰であろうと全力で準備し立ち向かう」と。
ハードパンチャーな試合巧者に思えるが、決して天才型ではなく努力で名だたる王者へ上り詰めた男だ。
しばらくは無敵と思われていた内山選手がこんなにあっさりと撃破されるなんて、ボクシングとは勝負とは一体何なんだろうとの思いも拭えない。
今は喜びいっぱいのコラレスもいずれは同じように負けてリングを去ることになるだろう。
そうした後に残るのはまさに人間そのものだと思う。
ボクサー内山高志の今後に勿論興味は尽きないが、人間内山高志としてこれからの人生も見てみたい。
昨日の防衛戦を観戦してそんなことを思うのだった。
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