何を血迷ったのか42歳中年おじさんボクシングを始める~太郎のボクシング奮闘記1

広告

リングアナの女の子の声がやたら大きく聞こえた。「1回目開始」

カーン!

「BOX!」

 

リングの中央に向かって行き、出だしはジャブでと思ったらいきなり相手の猛攻。

ブロックした両手の上からバシバシ打って来る。

ちょっと意識が遠くなる。

 

「やばい、このままじゃやられる」

 

ロープ際まで押しやられたのを反撃しながらリング中央まで押し戻す。

そして足を止めて壮絶な殴り合いが始まった・・・

 

プロローグ:入門

遡ること3年前、僕は谷九のとあるボクシングジムの門を叩いた。

そこはアマチュアボクシング専門のジム。

案内を見ると僕の様な素人で中年でも入会できるような敷居が低いジムだった。

1年に亘るダイエットが成功して僕は長年の夢だったボクシングを始めてみようと考えていたのだった。

 

でも自分みたいな小心者でも出来るのかな?とか入会切り出したらいきなり帰れ!とか言われたらどうしよう?とか今から思うとつまらない妄想がグルグルと頭の中を駆け巡っていたのだった。

いつまでも逡巡していても仕方がないので意を決して会社帰りに体験入会に参加してみたのだ。

 

ジムの入り口は練習生の靴で溢れ返っており、さほど広くないフロアの真ん中には5m四方ほどのリングが置かれ、その上や端で所せましと練習生達がシャドウボクシングをしていた。

 

「ホームページ見て体験入会に来たんですけど」

そう伝えるとこのジムのトレーナーだと自己紹介してくれた僕より遥かに若い頭にタオルを巻いた若者が案内してくれ、備え付けのジャージを貸すので着替えて待つように指示された。

 

着替えた僕はやり場のない居心地に悪さを感じながら練習するジム生達をボ~ッと眺めていた。

やたら声がデカいちょっと太った、いや巨漢の練習生がその身体に似合わず鏡の前で軽快にウィービング(相手の攻撃から身をかがめて回避するディフェンスの一種。アマ規定では前足のつま先より頭部が出ると減点対象となる)の練習をしている。

もう一人の練習生もなかなか巨漢だ。コイツ本当にボクシングなんてやってるのだろうか?どちらかと言えば相撲取りの方がピッタリくるような・・・とか思っていると膝にフェルトのひよこの当て布をしたパンツを履いたそいつはインターバル終了を知らせるアラームが鳴るとヤル気のない様子でシャドウを始めた。

 

「こいつは楽勝やな。上達したら絞めてやる」などと考えるともなしに考えているとくだんのトレーナーがやって来て「じゃあ一緒にシャドウをやってみましょう」と言って僕の人生初のボクシング経験がスタートした。

 

鏡の前で先ずボクシングの構え。僕は右利きなので、左足を前に出したオーソドックススタイル。

こんなことも知らなかった。映画「ロッキー」はサウスポーなのに右手でパンチ出してるじゃん!とか思っていた。

知らないとは怖いもんだ。

そして左ストレートの出し方。半歩踏み出すと同時に左腕を前に出す。

 

右腰を回転させて右ストレートの出し方。なかなか腰を回すと言う感覚がわからない。

 

パンチの手ほどきを受けながら思ったのは何て心もとない動作なんだ!と言うことだ。

もっと手応えのあるガツンとした感触を期待していたのに、威力があるのかないのか分からない何だかフワフワした感触。

「はい!ワンツー、ワンツー」

 

こうして長年の夢だった、そして結果的に4年に亘る僕のボクシングライフは心許ない状態でスタートしたのだった。

 

 

(つづく)

広告

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です