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肉離れが完治するまでに1ヶ月くらい掛かっただろうか。
その間思うのは「早く練習がしたい!」と言うことだった。
何事も習い始めは新鮮で楽しいものだ。
あの頭にタオルを巻いた若いトレーナーは親切でボクシングのことを何も知らないこの先ボクサーとして何の見込もない僕にさえ親切に指導してくれる。
早く完治してまた練習を再開したい、はやる気持ちで再開の日を心待ちにしていた。
そしてやっとその日はやって来た。
楽しみにしてジムに向かい「こんにちは~!」と威勢よく挨拶をしてジム内を見渡すとまるで明日のジョーの一コマから抜け出て来たような怖そうな陰のあるおっさんトレーナーがリング中央でミットをさばいていた。
「ワンツー、アッパー×2、ウィービング、ワンツー、・・・!!!」
巧みなミット捌きとド素人の僕が初めて聞くコンビネーションの指示。
この後1年に亘ってジムのチーフトレーナを務めることになるO氏。
現在3階級制覇で活躍中の世界チャンピオンのおじさん(元世界王者)と現役を共にした猛者だった。ちなみに現役時代はJ・ミドル級1位まで行ったらしい・・・
引退後は伝説のトレーナー エディ・タウンゼントから手ほどきを受けた国内有数のミット捌きの達人とのことだった。
そしてもう一人。
あっけにとられて見ているとドーン!ドーン!!と大きな音に気付いたので横を見てみると備え付けのサンドバッグがまるで風に煽られたウインナーの様に左右に大きく揺れているではないか。
それをぶっ叩く見たこともないような坊主頭の巨漢。
日本ヘビー級2位の竹原真敬(虎竜)さんと言う人らしかった。
近年日本ヘビー級王者の藤本京太郎と闘ったのでご存じの方もおられるかも知れない。この頃はオーストラリアから帰国して暇があったようだ。
手ぬぐいのお兄ちゃんからいきなり本格的トレーナー(しかも一人は現役)にチェンジして何が何だか分からずポカ~ンとしてO氏を眺めていると、O氏がやたら敵意のある眼差しで僕を睨み返して来た。
「やべっ!またやっちゃったよ~(汗)」
実は僕はボケ~っと眺めているだけなのに自動的にケンカを売ったと取られることがよく起こる。
これまで何度それでトラブルに巻き込まれたか・・・
それが寄りにも寄ってこれから頑張って行こうかと希望に胸を膨らませていたジムで起こるなんて。
「敵意ないですよ~♡」
僕は必死で目を大きくして可愛さをアピールするのだが時既に遅し。
波乱の幕開けを予感せざるを得ない・・・
(つづく)
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