僕が巡り合ったボクサーな人々③ 理論と実績を備えたKトレーナー①~太郎のボクシング奮闘記23

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フットワークを養うための集団でのサークリング、予め攻撃と防御の型を決めた条件付きマスボクシング、そして豊富なボクシング関係の人脈を活かした元ランカーや現役プロボクサーとのスパーリングなど。

Kトレーナーのボクシングに対する体系だった理論と練習メソッド、そして一般人が知ることもないだろうボクシングの人脈などは、今回想すればフィットネス会員が多いこのジムには少しキャパオーバーな感があったのかも知れない。

また良く言えば明るく人懐っこいKトレーナーの人柄もあり、当時の会員数はかつていたタオルトレーナーが在籍していた時以上の活況を盛り返した。

 

Kトレーナーは試合で勝ちたいと言っている割には勝率が低い練習生の面々を見て、「俺が勝たしてやる」と言い、事実そのつもりで理想に燃えていたに違いない。

当時彼は仕事面でしばらくボクシングから遠ざかっている状況で、アマジムとは言えしばらく振りにボクシングに復帰し自分の再生も懸けていた様子だったからだ。

そしてリングサイドに立ち、スパーリングをする練習生に激を飛ばしていた。

こいつらを勝たせたい、その一心で。

ところが現実はそう上手くはいかないものだと言うことが着任早々勃発した。

 

スパーリング中のとある練習生がKトレーナーのアドバイスに腹を立て練習を放り出してKに詰め寄ったのである。

練習生はKの激を罵倒と受け取ったからだ。

Kトレーナーはまさか練習生がそんな反応をするとは夢にも思わなかったことだろう。

一時期ジム内はその出来事で騒然となり、Kトレーナー自身もプロジムとは違う雰囲気の洗礼をいきなり浴びることになった。

 

Kトレーナーは非常に口が悪い。

高校を中退した後、プロボクサーとしてそしてトレーナーとしてずっとボクシングと言う狭い世界に生きてきた人物である。

練習生にとってトレーナーの指示やアドバイスは絶対で反論も許されない。しかしトレーナーは練習生が強くなるために必死で鍛える。

そんな図式でずっと過ごして来たのだろう。

従ってインターバルの合間にフロアに座り込んで休憩して仲間と談笑するこのジムの雰囲気は眼を疑うものだったに違いない。

 

目の前でこんなこともあった。

とある練習生がマスボクシングをしていた時だった。

「おい!ガード上げんかい!」

「まだ下がってる!お前何回言うたら分かるんじゃ!こうやってガード上げるんや、ちゃんと聞いとけ!!」

と言った瞬間

「お前誰に(客に向かって)言うてるんや!?」と練習生。

一瞬でみんなが二人の間に割り込んでその場は事なきを得た。

このジムでは練習中に激しく叱責することはない、練習生第一と謳っていたので、その練習生にすれば話が違うじゃないかと言う感覚だったのだろう。

 

このことがきっかけでKトレーナーの堪忍袋の緒が切れたらしく、SNSを通じてこんなジム止める!との投稿があった。

Kにとってはまさか練習生からそんなことを言われるとはトレーナーとしてまさに青天の霹靂、そして最大の屈辱だったに違いない。

そしてこんなジムでやってられるか!との思いが考えを占めたのだろう。

 

しかしこれから強くなって試合で勝ちたい僕らにとっては今Kトレーナーがジムを去るのは非常な痛手だ。

特に僕は次戦を最後と決め、そして強くなって来ている実感があったので余計危機感を感じた。

ジムの会長に何とか遺留して欲しいと相談もした。

しかしKの決意は固く既にジムにも出て来なくなり、ジムに置いていた愛用のミットも引き上げたとのことだった。

いよいよこれは本気だな、と思った僕、関取、そして明石の親父は彼を引きとめるべく説得に向かうことにした。

 

(つづく)

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