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ボクシングジムでの飲み会の話のついでに思い出す人物がいる。
この人はその当時東京から単身赴任で大阪にやって来て、地元でもプロジムで練習するくらいのボクシング好きなのでわざわざ赴任先でもボクシングジムを見つけて練習に通っていた方だった。
暮れに開催されるジムの忘年会で懇意になり、当時は僕も他に知り合いがいなかったので何かと話をするようになったのだった。
この男、体格は180㎝くらいでがっしりとした巨体、階級は文句なしのヘビー級だ。
太い首に太い腕。
聞けばシステムエンジニアをしているらしいが、ちゃんとキーボードが押せるのか?心配になるくらいの太い指をしていた。
この人との思い出は実戦で拳を交えたことよりも、アフターでの思い出の方が根深い。
練習終わりに飲みに行こうと約束をしたとしよう。
仕事の都合で彼の練習時間と僕の練習時間は違うので、僕の練習が終わるまで一旦彼は帰宅して着替えてやって来るのだが、酒好きの彼は必ずいっぱい引っかけて来る。
「遅いよ!おかげで家で缶ビール6本飲んで来たじゃねぇかよ!」
これがコイツの口癖だった。
こいつとは数限りなく飲みに行ったが、100%翌日は死体となってしまう。
体格の違いもさることながら肝臓のアルコール分解能力が僕とは格段に違うのだろう。
翌日は必ずひどい二日酔いになるので、平日は絶対に誘いに乗らなかった。
そこで付けたあだ名が厄災をもたらす大魔神、今でも仲間からは大魔神もしくは魔神と呼ばれている。
この大魔神、良いところもあって先に言った忘年会で僕が酔いつぶれて朝気付けば見知らぬ一室に。
何とビジネスホテルに僕を放り込んで精算までしてくれていたのだった。
こう言う気の優しいところはある。
しかし飲みに行くのは躊躇する相手であることは間違いない。
忘れられない思い出がある。
Kトレーナーの送別会か何かの時だったが、最後に残ったのがK、僕、明石の親父そして大魔神だった。
場所は西成のドヤ街の一杯飲み屋。
終電も無くなって帰るかとなったが、僕には足がない。
ホテルも泥酔の僕を見かねて宿泊を拒否られる始末。
「仕方ない、俺のところに泊れよ」
でも帰宅して自分の寝床で寝たい僕は「タクシーで帰る~」と弱弱しい声で呟いたまさにその時。
「ふざけるなよテメー!」
と急に大魔神が怒り出して僕の首を持ってまるで風車のように振り回し始めたのだ。
「俺が折角泊めてやるって言ってるのによー!」
「やめろ、やめろ!頼むからやめてくれ~ぃ」
グルグルグル・・・
洗濯機の中で翻弄されるボロ雑巾のように首を掴まれた僕はただなす術もなく振り回されるしか仕方がないのであった・・・
(つづく)
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