長野県野沢温泉スキー場にある松葉荘は僕らが学生時代からお世話になっている定宿だ。
ゲレンデと温泉街の丁度中間の坂道にある40名程度収容の小さな民宿なのだが、そのアットホームな雰囲気とボリュームのある食事が魅力でシーズンの週末になると大挙して訪れている。
若い頃は勢いがあったので夜中まで酒盛りして騒いで一昨年亡くなったご主人に怒られたりもしたが、それも良い思い出だ。
あれから30年近く経過するが今だそのお付き合いは脈々と続いている。
かつてこの宿には宿泊者が自由に書ける旅の日記帳なる冊子が常備されていて、そこに我々は下らないことをつらつらと書き連ねていたのだ。
その筆頭が僕だったことは言うまでもない。
そんな中事件は起こった。
これから書くことはその日記帳に僕が顛末を書いたもので、現在はその冊子もなくなってしまったので当時の顛末をここに書いておきたいと思う。
1992年2月7日午後、僕は独り不貞腐れて宿の一室でテレビを見ていた。
原因は前の日コブ斜面を滑っていたのだが以前より滑れなくなっていたことに腹を立てていたのだ。
その頃僕は社会人1年目で、有り余る時間を浪費してスキーにうつつを抜かしておれなくなり、十分な滑走時間が確保できず腕前の低下を痛感したからだ。
上手く滑れない。ならもうスキーなんかやってても無駄、と短絡的に考え、独り宿に残ってコタツに入って寝転がりながら煙草を吸いつつ冬季オリンピックの開会式をぼ~っと眺めていた。
天板の上には前日の飲み会の空き缶やらスナックの袋、友人のコンタクトレンズケースなどが散らばっている。
灰皿も置けないので、空き缶を灰皿代わりにして近くに置いて煙草を吸っていた。
見ることなしにTVを眺めつつ、くだんの日記帳に「まともに滑れないスキーなんてもうやっても無駄」など女々しいことを書き連ねる。
足元のコタツはサーモスタットが作動して点いたり消えたりするのを素足が感じている。
「あ~!ホンマにもうスキーなんか止めよ。オモロないわ」
・・・
「何か熱いな?ちょっと効き過ぎちゃうか?」
と思いコタツ布団をめくると、何とコタツの脚がまるで雷に打たれた老木のようにメラメラと炎をまとってコタツの中が火の海になってるじゃあないですか!!
つづく
わくわく・・・続き希望
お楽しみ頂けましたでしょうか?
先程名前書き忘れてました
火傷は大丈夫でしたか?
さぁ、どうなるでしょう?(笑)